誰にでも簡単に健康になれる方法

 

 誰にでもすぐに、しかも簡単に出来る、健康になれる方法がある――、なんて言ったら、ほとんどの方は眉につばをつけるか、薄くわらって、ほんとかいな、と疑い深く私を見直すのではないだろうか。ところがほんとにあるのである。

 ま、聞いてください。

私はその方法を知ったその日から実践し始め、程なく明らかな効用を見出し、以来ずっと続けているのである。そして、日々、心身ともにますます健康になっていくのを実感している。

 高齢者の域に入っている私は、普通なら病気の一つや二つ持っていても不思議ではないだろうとおもう。実際、先に同級会があったので出席したが、殊に男性は元気がなく、すでに半数近くが亡くなっていて、残った中でも、癌だとか、内臓疾患、腰痛、膝痛、などに悩まされているという話ばかりで、どこも悪いところがないというのは、私ともう一人だけだった。

 私も実は、現役時代から亡妻の介護時代を含めてあまり健康とは言えなかったのだ。胃十二指腸潰瘍で四回の入院をはじめとして、椎間板ヘルニアでの数年の通院、またしょっちゅう風邪をひいて薬を飲んでばかりいた。

 それがここ八年程、風邪すらひいたことのないのである。どこも痛いところはなく、治療を受けたこともない。医療に関しては毎年市民健康診断を受けるのみである。しかも検査結果は、私の年齢では稀といえるぐらいほとんどの検査項目が正常値を示していて、結果説明会の担当者が驚くぐらいなのである。

 一般的には、若いうちは健康でも、年齢と共に身体が衰え、高齢になればどこかしらに病気が出るというのが、一般的なのではないだろうか。しかし、私の場合はその逆を行って、若い頃よりも今の方が元気なのである。

 どうして、そうなのか――

 別に難しいことをやっているわけではない。その具体的な内容を記述したい。少しでも参考にしていただければ幸いである。

 実践していることは、大きく分けて二つある。

一、 心の持ち方
二、 栄養

 そのことを説明する前に、これは宗教ではないということをあらかじめ断っておきたい。私は基本的に無信仰で、いかがわしい宗教とか呪文やおまじないの類と混同して欲しくないからである。

そして、説明は必要最低限だけにし、主として私が実践していることだけを述べたい。もしも、疑問を感じたり、もっと詳しく知りたいと思ったら、最後に参考文献を挙げておくので、各自で調べてください。

 まず、心の持ち方についてであるが、潜在意識を常にきれいに保つように心がけている。

 ところで、私たちが考えたり思ったりするのは顕在意識で、その奥に広く深く存在しているのが潜在意識である。この潜在意識は見えないし感じることも出来ない心の領域である。だから普段意識することなく生活している。氷山に例えるなら海面に頭を出しているのが顕在意識であり、海面下に沈んでいる巨きな氷の塊の部分が潜在意識なのである。顕在意識よりも潜在意識の方が比べものにならないぐらい大きい。

 この潜在意識は実に多くの役割を担っている。その一つが、身体を健康に、丈夫にする作用を担っていることなのだ。

 

 血は夜でも休まず流れている。心臓も同様に動いている。胃や腸、肝臓などの臓器だって働き続けている。あなたが動け働けと言っているわけではないことは確かですよね。じゃ、誰が動かしているのか。ひとりでに動く? まさか。そんなわけはない。それを動かす役割を担っているのが、潜在意識なのである。

 眠っている間でさえ、心の奥にある潜在意識が生活関係の神経系統を通して心臓をはじめとした五臓六腑を絶えず動かす命令を下しているのだ。要するに、知らず知らずのうちに潜在意識は私たちの命を守るという偉大な力を発揮しているわけだ。

 実は潜在意識は宇宙と繋がっているのだ。そして、その宇宙から私たちが生きるためのエネルギーを受け取っている。そのエネルギーで私たちの五臓六腑を動かしているのである。ここに、潜在意識をきれいにしておかなければならない理由がある。潜在意識が汚れていたらどうなるか。霧や靄がかかっていたら、太陽光が地表にわずかしか届かないのと同じで、宇宙からのエネルギーが受け入れにくくなってしまうのである。そうすると、血流が悪くなったり、腸や肝臓などの臓器の働きが鈍くなる。そして、身体のあちこちの調子が悪くなり、しまいには癌をはじめとした病気になってしまうのだ。

 では、潜在意識をきれいにするとはどういうことなのか。それが分かるためには、逆に、汚くなっている潜在意識の状態を説明した方が分かりやすい。

 潜在意識がゴミ溜めのように汚くなっている状態を、私は、

 船追う鵜――ふ・ね・お・う・う

 と覚えている。

ふーー不安 ね――妬み おーー怖れ う――疑い う――恨み

 つまり、心に、不安、妬み、怖れ、疑い、恨み、などの感情を抱いて生活している状態なのである。その他にも、怒り、悲しみ、悩み、苦しみ、悶え、痛み、などがある。これらを消極的観念要素とも言うのだが、要するに、こうしたマイナスの観念要素を抱いていると、それが顕在意識から潜在意識に入り込んで、溜まってしまい、潜在意識がそれらのマイナスの観念要素で充満してしまう。そういう状態を潜在意識が汚れているというのである。

 私の若い頃を振り返ってみると、いつも現状や将来への漠たる不安や怖れに苦しめられていた。それらの不安や怖れが潜在意識を曇らせ、本来天から受け入れられる生きるためのエネルギーを減殺させ、胃を弱めたり、腰椎を痛めるということに繋がったのである。また、人間にもともと備わっている免疫力も弱まったため、しょっちゅう風邪をひいたというわけなのだ。

 幸いにも、六十四才になってから、今の同居人に出会い、ある修練法を教えてもらい、そのことがきっかけとなって、潜在意識の作用について詳しく書かれた数冊の書籍に出会うことが出来た。そして、冒頭に述べた、

――誰にでも簡単にできる健康になれる方法

 を知ることができたのである。

 では、汚れた潜在意識をきれいにするにはどうしたらいいのか。

 その鍵は夜の寝際にある。夜の寝際、すなわち布団に入って眠るまでの間が大事なのだ。床に就いて落ち着いたら、楽しい、いいことだけを思い浮かべたり、考えたりするのである。それだけでいいのだ。だから、誰にでも「簡単に出来る」と言ったのである。

 その日あった嫌なことや面白くないことなどを思うことが一番いけないことなのだ。悔しいことがあったり、心が傷ついたりしたとき、特に手酷い衝撃が受けた時など、繰り返し繰り返しそのことを思い浮かべたり考えたりしたことはありませんか。そういうことが最もよくないことで、潜在意識をどろどろに汚してしまうので、心や身体にとっては最悪のことなのだ。健康に痛烈な打撃を与えてしまうことになる。

 というのは、寝際の眠る直前は大脳が休み始めるときで、そのとき思ったり考えたりしたことが、最もすんなりと潜在意識に入り込み易い状態になっているからなのだ。だから、プラスのことを思ったり考えたりすれば潜在意識はきれいになるし、マイナスのことを思ったり考えたりすれば汚れてしまうわけである。

 従って、例え嫌なことがあったり心が傷つけられることがあったとしても、それは脇に置いて、いいことや楽しいことや嬉しかったりしたことなどを心に引き寄せて、思ったり考えたり想像するべきなのである。そうすれば潜在意識が汚れることはなく、次第にきれいになっていくのである。黒く汚れた水が入ったバケツを下に置いて、水道の蛇口をひねって細く水を垂らして一晩中そのままにしておくと、明け方までにはバケツの中の汚れた水がすっかり澄み渡ってしまうようなものなのである。逆に、蛇口からどす黒く汚れた水を垂らしておくことを想像してみてください。ぞっとしませんか。

 ではプラスのこととはどういうことなのか、書いておきます。

 先に記述したマイナスの観念要素の反対とおもえばいい。不安、妬み、怖れ、恨み、疑い・・・などと反対の言葉――

愛、感謝、歓び、希望、明るい、楽しい、美しい、強い、尊い、清い・・・、などなど。これを積極的観念要素という。そういう内容のことや情景を布団に入ったら想像しながら眠りにつけばいいということなのだ。

 心がけるべきもう一つ大事なことがある。それは普段使う言葉である。
 言葉や文字、事象には暗示力があるということを念頭において思考すれば、自ずと分かるだろう。

――ああ疲れた、仕事なんか嫌だなあ、もう死にそうだよ

 なんて何気なく言うことがあるかもしれない。ああ疲れた、は事実だからいいとして、仕事なんか嫌だなあ、もう死にそうだ、はマイナスの言葉で、これは自分で自分にマイナスの暗示をかけていることになるので、いいことではないのである。

――何だよ、疲れて帰ってきたのに、ろくな食い物がねえなあ

 機嫌悪く、続けて奥さんにあてこすりをいう。こうなると猶更いけない。これでは、自分の潜在意識を汚すばかりではなく、奥さんをもマイナスに引き込んでしまうことになるのだ。

――何いってんのよ、私だって仕事持ってて疲れてるのに、毎日の食事作ってるのよ、ああ嫌だ嫌だ

 奥さんが反発して、諍いに発展してしまうかもしれない。奥さんの潜在意識まで汚してしまうきっかけになりかねない。要するに、二人とも病気への扉の前に立ってしまう原因を作ってしまう恐れがあるのである。何気なく言っていても、それが毎日積み重なれば潜在意識はゴミ屋敷同然となって、健康を損ねることは間違いないだろう。

 例え疲れていたとしても、

――ああ今日はいつもより疲れたけど、頑張ったからなあ、充実感があるよ。ありがとう、君だって仕事してるのに食事作ってくれて感謝してる、ご苦労様

 てな言い方をすれば、奥さんだって刺々しくならずに済むだろう。

 こういうことだって、ちょっと心がければ出来ないことではない簡単なことで、自分の健康に影響を及ぼすことを考えれば、断固マイナスの言葉を吐かないという決意をするべきなのである。

 それでなくとも現代の生活にはマイナスの観念があふれている。テレビをつければ、犯罪、事故、政争、不倫、いじめ、病気・・・、などのニュース、殺人場面のドラマ、などなど。私たちは知らず知らずのうちにこうしたものを受け入れて、潜在意識は汚され濁っているのである。そこに加えて自分でマイナスの観念を注入しては、健康は損ねられるばかりだろう。だから、寝際にいいことや楽しいことを想像して、つまりプラスの自己暗示をかけて、潜在意識を絶えず掃除しなければならないとと同時に、普段使う言葉にも注意するべきなのである。

 さて、若い頃の私は不安、怖れに悶えていた上、勤め先で仕事に行き詰まったり人間関係に悩んでいて、眠れない夜がつづいたものだった。絶えず気持ちがおどおど落ち着かず、神経をイラつかせていたものである。これでは潜在意識がどろどろ状態で病気になるのは当然だったとおもう。

 こういう状態を神経過敏というのだ。後で振り返ると、たいしたことでもないのに、怒ったり、気にしたり、悩んだりしていた。神経過敏に陥ると、受けた心の衝撃を神経系統が何倍にも増幅して感じてしまうからなのである。

実はこうなるのを避ける簡単な方法があるのである。その頃この方法を知っていれば、もっと楽に生きられたろうし、病気にもならずに済んだろうとおもう。知識のあるなしは人生を大きく左右するのである。

嫌なことがあったり、心に衝撃を受けるようなことがあったときには、すぐに、

・肛門を閉める
・下腹(鳩尾のあたり)に力を入れる
・肩の力を抜いて下す

 この三つを素早く同時に行う。これだけでいいのである。

 この方法を「クンバハカ法」という。インドのヨガの秘法なのだ。こうするとどうなるか、説明すると長くなるので、簡単に述べると、鳩尾のあたりにある太陽神経叢と呼ばれる神経の塊や、胸、その他人間の急所に散在している神経の塊が、受けるショックから守られるのである。

詳しく知りたい方は、後に挙げる著作を読んで調べてください。

これはやってみれば実感できることなので、実際に実行してみてください。

このクンバハカ法を日常的に実践していると、神経系統が調節されるようになって、神経過敏は解消されるのは確実で、少なくとも私の場合は実行後程なく気持ちが落ちついて、イライラしたりおろおろしたりすることがなくなったのである。

ま、簡単にすぐできることなので、どうのこうの考えるよりも実践してみることです。

ここまで述べてきた方法は、誰にでも簡単にできるものだということは分かっていただけたのではないでしょうか。ほとんど手間も時間もかからず、税金もとられません。
 
 ところで、潜在意識は人間の生命を司ることの他、記憶を貯蔵するという大事な役目を担っているのだ。また、人間の願望を実現するという偉大な力も持っている。本稿の目的は健康について述べることなので、潜在意識のその他の働きについては、別の機会に譲りたい。

 では、二つ目の栄養について――

 

 栄養のバランスのとれた食事をすることが大切、ということがよく言われ、全くその通りで、それに尽きるのだが、しかし――、である。

 私が三十九才のとき妻が病気になったため、食事は私が担当することになった。穀類、野菜、果物、茸類、魚肉類、海草類など、満遍なく摂るように配慮した食事を作った。二十三年の介護だったが、アルツハイマー病で後半十年間は寝たきりになった末、妻は亡くなった。当然脳は委縮して最後には言葉までなくしたが、晩年になっても内臓は丈夫で検査を受けるとほとんどの臓器の検査値は正常だった。このことからして、私が作った食事のバランスはよかったとおもわれる。

 しかし、私の方は不眠や倦怠感、股関節の痛みに悩まされ、しょっちゅう風邪をひいて、咳をしたり鼻汁を啜ったりしていた。妻をトイレに座らせたり、ベッドに寝せるとき、腰に負担が来て何度もギックリ腰を起こして、四つん這いで移動しなければならなかったこともしばしばだった。

 妻没後再婚したことは別の作品に書いたが、現在の同居人はアロエ製品のネットワークを手掛けていて、自然私も愛用することになった。

――人の身体の細胞が全部入れ替わって新しくなるのには四ヶ月かかるのよ、だから、アロエの効果がでるには四ヶ月かかるわ

 と彼女は言った。しかし、アロエジュースを飲み始めて二ヶ月経った頃、私の身体に明らかな変化が現れた。手足が温かくなり、身体の奥の方から力がじわじわとみなぎってくるような感覚が満ちてきたのである。

――栄養のバランスと言っても、現代の日本で、バランスよく栄養素を摂ることは不可能なのよ

――?

――人糞や家畜の糞など有機肥料しかなかった昔と違って、今は作物に化学肥料や消毒薬、除草剤などを使うでしょ、遺伝子組み換えのものもあるわ。野菜にしても、本来含まれているべき栄養素がなかったり、薄かったり、昔はなかった毒素が混じっていたり・・・

――ふーん

――だから、アロエの出番なのよ
 彼女の言うことには説得力があった。

――これはあまり知られていないけど、人間の身体には主要栄養素の他にも、必須微量栄養素というものが必要なのよ、必須だからほんの微量ではあっても、毎日必ず摂らなければならないものなの

――私も知らなかったよ、それ

――そう、必須微量栄養素は四十七種類もあるわ、その一つでも欠けると、体調を崩したり、病気になってしまうのよ

――へえ

――アロエジュースにはその微量必須栄養素をだけではなく八十種類以上の栄養素が含まれているわ、だからアロエジュースを飲むようになると、ぐんぐん健康になるのよ

 私は彼女の言うことを素直に信じた。
 

しかし、人はなかなか信じない。私は彼女がアロエの良さを伝えようと人に説明する場面に何度も立ち会っているが、聞き入れられたのは数例にすぎなかった。

 振り返ってみると、彼女の話を信じて愛用者になった人は私を含めて皆健康になっている。癌が治った人もいる。逆に彼女の話が信じられなかった人のうちには、その後癌で亡くなった人もいれば、大病を患っている人もいる。ま、信じられないというよりは、彼女が扱っているアロエ製品は決して安い商品ではないので、それがネックとなって愛用者にはなれなかったという例も多いのだけれども・・・。

 彼女のすすめるままに愛用者になったのだが、以来私が風邪すらひかない健康体になったところを見ると、いくら栄養のバランスを考えた食事をとったつもりでも、栄養素の何かが不足していたのだろう、とおもう。その何かは分からないけれども、彼女言うところの必須微量栄養素のうちの何かだったのではないだろうか。寝たきりの病人だった妻は平気でも、昼夜介護のハードそのものだった私にとっては、何らかの栄養不足は体調に少なからず響いて、不眠や倦怠感に悩まされ、ギックリ腰にたびたび襲われたのもそのせいだったのかもしれない。私だって病妻と同じ食事をし、市の検診ではコレステロールがやや高い他は検査値が正常値だったのにかかわらずである。
 
 それではこの辺で筆をおくこととしたい。

(参考文献)
C・M・ブリストル「信念の魔術」、エミール・クーエ「自己暗示」、中村天風「成功の実現」「真人生の探求」「研心抄」「幸福なる人生」

2017年10月23日